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旭川ラーメン ~低加水麵に濃厚スープが合う~
北海道3大ご当地ラーメンは札幌の味噌、旭川の醤油、函館の塩。首都圏の旭川ラーメンブームは1990年代の後半に巻き起こった。旭川ラーメンは歴史あるラーメンなのに、その頃、札幌・東京に大きなムーブメントを起こしたことは、客観的にみると面白い出来事である。しかし、その裏では、そうなるべき動きがあったのだ。
東京では1994年、恵比寿に「山頭火」がオープン。旭川に本店があり、その後急速に成長。北海道中心に南は博多まで50軒以上のチェーンを展開した。しかし、2022年現在10数店舗になっている。一方、海外では相変わらずの人気で40店舗以上を展開。ちなみに本店の開店日は店名にちなんで3月10日である。
1990年代後半、札幌では「札幌ラーメンvs.旭川ラーメン」という構図ができ上がり、マスコミでもそういう紹介が多数なされた。今は札幌にもすっかり旭川ラーメンが浸透し、すでに旭川ラーメンを通り越し、それすらも新しい「札幌ラーメン」になってしまったかのような錯覚を受ける。旭川ラーメンとしての札幌進出一号店は平成元年に開店した「平成軒」。札幌の人気店「山桜桃」「五丈原」なども「山頭火」の流れにある旭川ラーメンである。
さて、旭川ラーメンの特徴は何か。麺は加水率が低くやや細めの縮れ麺。スープをよく吸うのでスープに馴染みやすいが、その反面伸びやすいともいえる。豚骨と鯵の煮干しなど海産物から採る濃厚スープ、醤油ダレが特徴。具はシンプルな店が多い。老舗の代表店は「青葉」と「蜂屋」の二軒である。
「青葉」は1997年から98年の期間、新横浜ラーメン博物館への出店を機に全国ブランドとなった。また全国有名デパートの物産展などにも精力的に出店し、しかも、その際は本店を休んでご主人自らラーメン作りに上京するという力の入れよう。50年スープとも呼ばれる伝統の継ぎ足しスープは豚骨、鶏ガラの動物系に、鰹節、煮干し、昆布などの海産物系、そして野菜などを弱火でじっくり煮出したもの。極寒の地、旭川ならではの工夫か、スープの表面には油の層が。これで冷めるのを防ぎ、熱々状態で食べることができる。
一方、もう一つの雄である「蜂屋」は、1999年に新横浜ラーメン博物館に入ることになる。同じ地区のラーメンで二軒入るのは札幌・福岡以外では、かなり珍しいケースである。それだけに実力店があるご当地だといえよう。この「蜂屋」は、スープの香りに大きな特徴がある。焦がしたラードの風味に強いインパクトがあり、好みが分かれるのである。しかし、このインパクトがあったからこそ、地元旭川では長い間、愛されてきた味なのである。スープは豚骨と鰺の煮干しを煮込んだWスープ。このWスープという表現はここ数年使われるようになったが、この「蜂屋」では、半世紀前からWスープなのだ。
旭川ブームを起こした裏の仕掛け人がもう一人。いや、もう一組、それが「加藤一族」である。「蜂屋」の主人も加藤家の一人なのだが、その兄が初代社長となったのが旭川の代表的製麵所の一つである「加藤ラーメン」。今は長男がそこを引き継いでやっており、札幌進出も果たした。そして、次男は首都圏進出を果たし、見事に札幌・東京両方で旭川ブームを実現したのである。ここで面白いのは、兄は製麵所として札幌に進出していったが、次男は「旭龍」を代表とするラーメン店として進出し、そしてフランチャイズ展開で事業を伸ばしていったことである。「旭龍」以外にも「旭鳳」「こもり」「共華」と一気にシェアを拡大。旭川を札幌と並ぶくらいのご当地としての浸透を果たしたのである。
なお、人気店「天金」は煮干しを使わず、豚骨と鶏ガラだけで驚くほどのコクを出している。
旭川ラーメンとは
北海道の旭川発祥のラーメン。加水率の低い細めの縮れ麺を使う。多くが、魚介類と豚骨・鶏ガラで出汁を取ったWスープを採用しており、それに醤油ダレを使うのが主流。スープを冷めにくくする目的でスープに多めのラードを入れる。